【戦場のヴァルキュリア4】とてもエモかった。感情移入してしまうキャラクター作りとは※1も含めたネタバレあり

戦場のヴァルキュリア4をクリアしました。久しぶりに「この世界が終わってほしくない」というエモい気持ちになれたタイトルだったので、このエモみを発散するためにもまずは感想を。そしてそのあとに、エモい気持ちにさせるキャラクター作りについて考えていきます。

この記事は「戦場のヴァルキュリア」および「戦場のヴァルキュリア4」のネタバレを含みます。

エンディングを迎えたデータをロードすると、新しいおまけ要素が追加されています。そのうちの一つ「慰霊碑」では、散っていた兵士たち(除くラズ)を復活させることができるようです。

「ようです」と書いたのは、実際に復活させてないからです。復活させたその瞬間、彼らが「キャラクター」から「ゲームの駒」に、あの「西ヨーロッパ」という世界が「ただのゲーム」になるようで、それがたまらなく嫌なんです。端的に言えば「世界観の崩壊」でしょうか。ラグナイト技術とヴァルキュリアの力で致命傷で生死の境をさまよっていたのが快復する、とかなら迷わずやります。最終的に自分の感情がどう着地するかは別の話ですが、すくなくとも世界観は維持されます。

そのくらい、あの世界に、キャラクターたちに入れ込んでしまっていました。彼らがどんな行動をとるのか、未来には何が待ち受けているのか、にどんどん引き込まれ、始めのうちはSランクをとるまで一つ一つトライ&エラーを繰り返していた戦闘も「はやく続きのストーリーを見たい(から戦闘はとりあえずクリアしちまおう)」という気持ちの方が強くなっていました。

一番エモかったのはラズが決死隊の任務を請け負い、見事達成するまでのシーンでしょうか。涙腺にくるものがありました。決死作戦を立案しつつも、指揮官としての自分が今までの自分と乖離していることに戸惑うクロードと、みんなを守るためと気丈にふるまい彼を励ますラズ。ラズらしいなぁ、かっこいいなぁ、辛いだろうなぁ、絶対負けられないなぁ、羨ましい友情だなぁ、という感情がないまぜになった涙でした。序盤、幼馴染たちで写真を撮った時に「あ、この中の誰かが死ぬんだな」とは思っていましたが、直後のカイ救出戦で誰も死ななかったことからミスリードだとすっかり忘れていたこともあり、ラズが死ぬんだ、という展開に入っていったのはショックが大きかったです。直前でラズのポテンシャル「不死身」が「決意」に代わるのも、間違いなく死ぬんだなと。

直後の戦闘では、プレイヤー自らの手で、「ラズたち決死隊を殺すための作戦」を遂行しなければなりません。ここでプレイヤーは、クロードの覚悟を追体験することになります。非常に残酷なミッションです。決死隊に選んだ隊員に固有ボイスが用意されているのも、それだけここにウェイトを置いて作られているのがわかります(それだけに、最期のカットシーンでは相方のキャラクターも登場してほしかった……ラズが一人で突入したようにどうしてもみえてしまいます。ちなみにザイガを相棒に)。

任務達成後の通信で、始めは非情に徹するもこらえきれず絶叫するクロード。その直後にあくまでシステムの一環として手渡されるラズの遺品。ここ、ムービーやイベントでなくシステマチックというのがミソです。「死」のあっけなさ、不可逆性がシステムのそっけなさと見事にかみ合っていると思います。

クリアした後にネットの反応を見てみると、ラズ(とカイ)は嫌われていたようで驚きました。「あの二人は遊びで戦争してんのか?」とか言われてました。確かに序盤は突っ走る行動が目立つラズでしたが、感情を素直にさらけ出す彼のことは嫌いにはなれません。「ペルソナ5の竜司と同じで嫌い」という声もありました。そういえば竜司も似たようなキャラで、結構受け入れられない声が多かったですね。モルガナに役立たずと言い放ったあたりで一気に嫌われるのかな?「馬鹿だけど悪い奴じゃない」って感じで、やっぱり好きなキャラです。彼がなぜガチで嫌われるのは、また別途考えてみるのも面白そうです。話を戻しましょう。カイについては後述しますが、カイとの恋愛云々より、クロードとの友情がアツく沁みたので、あまり気になりませんでした。

A2爆弾の投下直前で停戦を知ったクロードが、起爆装置から手を放す場面も、クロードの危うい二面性が良く描かれていたと思います。平和のために戦う、E小隊長までの彼であれば間違いなく中止でしょうし、センチュリオンを背負い、連邦を背負い、フォルセとの邂逅を経て闇堕ちしつつあったクロードであれば、投下したかもしれません。ここは意見が分かれるシーンだろうなーと思っていましたが、案の定ミネルバが揺らしながら突入してきました。A2爆弾はやりすぎに感じていたので、あの展開でよかったと思います。完全に原爆投下の理論でしたよね。ミネルバのみならずクロードにとっても、当事者である彼らが爆弾を落とさない、という判断を下すのは非常に難しいことだと思います。そこで冷静な判断を下せたクロードの、フォルセとの違いが際立つシーンであったと思います。

F小隊壊滅以降のミネルバには正直あまり感情移入できません。初めは、やり場のない悲しみをクロードにぶつけているだけなんだろうなと思っていました。彼女ほど聡明な人間が、F小隊壊滅の責を本気でクロードに追及しているとは思いたくないのですが、その葛藤の描写もなくマジでクロードにキレているように見えてしまい、なんだかがっかりしてしまいました。

余談ですが、あの場面での選択をプレイヤーにゆだねたら、なおエモくないですか?クロードの手元のカットにカメラが寄って、上を入力すればA2爆弾投下ルート、下を入力すれば停戦ルート。いままで帝国とたたかってきたプレイヤーとして、止められるのか、徹底的につぶさなければ気が済まないのか。どちらを選ぶ人が多いのか、結構気になります。作品のテーマとは逸れるので自分がディレクターだったら採用しませんが、プランナーだったら面白そうなので提案してたと思います。MGS3の最期の引き金に近いイメージですね。

フォルセの脱走を手引きしなければ、カイを招き入れなければ、カイ自身が内通に加担しなければ。クロードが親友であるラズ、フォルセを失ったこと、ラズが自らの命を、カイが唯一の家族と新たな家族になり得た人間を亡くしたのは、その罰です。結果的に見ればフォルセが敵に回り、その情報が漏れていたことで何百人もの命が失われたでしょう。クロードたちが生きていることすら、許されないこととも言えます。ただ、E小隊の歩みをすぐそばで見ていたプレイヤーとしては、彼らの代償は非常に大きかったと、そのくらい彼らに寄り添う気持ちになっていました。

最期まで腑に落ちなかったのは、フォルセとカイの行動原理です。はじめ、フォルセはよく似た別人か、記憶障害か、あるいは連邦のためのスパイとして帝国に与していると思ってました。カイの内通している理由も、最終的には連邦のためになるものだと。でもフォルセは完全に連邦を裏切っている。カイの「兄さんには逆らえない」という言い分は、それを納得させるだけの彼ら兄妹の関係描写が不足していました。この辺が「遊びで戦争~」と言われてしまう一つの理由なのでしょう。フォルセの裏切った理由にも、イマイチ納得できない。たまたま見た連邦の暗部、アンジェのためにそこまでするか?という感じ。それだけ彼女が「いい子」だった、ということであれば、プレイヤーにもそう思わせないといけないかなと。たとえばペルソナ4の奈々子なんかは、プレイした人ならだれでもが守りたいと思うキャラクターとして深く描かれていたと思います。フォルセがそれを許せないほど純粋なのであれば、そういった描写がもっと必要でしたし、クライマリアやニコラ、キアラを救おうとしない態度が納得できません。

と、いうところで一部不満もありますが、キャラクターへの感情移入という点では抜群のタイトルでした。直前にやっていたのがMHWやFarCry5という、アクションに比重を置いたタイトルだったこともあり、久々にストーリーを楽しめました。

そういった、キャラクターやストーリーへのアンテナが敏感になってきたのは、センチュリオンが登場し、人物の生き死にの匂いがし始めたあたりでした。戦場のヴァルキュリアは、独自のアートエンジン”CANVAS”により、水彩画のイラストのような柔らかいグラフィックが特徴の一つで、血や死、渇きや飢え、行軍の悲惨さといった表現はかなり割愛されています。シリーズ共通のテーマは”絆”、”希望”であり、決して血なまぐさい戦争を描くものではないとのこと。ただ、その分やはり、命のやり取りをしている、という印象はアートからは弱いです。ぶっちゃけ強めのエアガンを撃ち合っているといわれても違和感はないくらい。レーティングの事情もあるでしょうし、そこはトレードオフだとは思います。

http://gamez.itmedia.co.jp/games/articles/0804/24/news003_3.html
ITmedia 2008年04月24日 00時00分 更新
“非情な戦争の中の人間ドラマ”を描くチャレンジタイトル (3/4)

メインのみならずサブも含めキャラクターへの魅力、愛着を持たせることに関しては、非常に力がかけられています。ざっと思いつくだけでも、こんな仕掛けが施されています。

  • フルボイス
  • 隊員断章、人物総覧での設定掘り下げ
  • 入隊時に必ず自己紹介
  • カットシーンの背景にもサブのキャラクターが配置

また、本作ならではの”BLiTz”の誕生も、キャラクターへの愛着が出発点とのこと。”BLiTz”がなぜ面白いかは別途記事にします。

http://gamez.itmedia.co.jp/games/articles/0804/24/news003_2.html
ITmedia 2008年04月24日 00時00分 更新
“非情な戦争の中の人間ドラマ”を描くチャレンジタイトル (2/4)

(BLiTzの生みの親だという4のディレクターの”戦場の臨場感をカジュアルに与えたかった”というこちらのインタビューを見る限り、微妙に食い違うような……?

https://game-maniax.com/archives/detail/14128
ゲームマニアックス 2018-03-16 12:00
『戦場のヴァルキュリア4』ディレクターインタビュー。気になる新要素や7年分の裏話も!?)

単純に死んだだの、惚れた腫れたではプレイヤーの心には響きません。「彼らがなぜそういう行動をとるのか」納得できるだけの描写がないとプレイヤーは置いてけぼりを食らいます。「クロードは泣いているのにラズは笑っている」「さっきまでラズを見捨てようとしていたクロードが、今度は死なないでくれと叫んでいる」。これらの矛盾したように見えるシーンも、いままでの二人の関係性、クロードの立場の変化がきちんと描かれているから、その理由に納得し、共感、あるいは同情、羨望、使命感といった感情が刺激され、結果「エモい」キャラクターになるのだと、強く感じたタイトルでした。

※通常エンド後の真エンドがあるんですね。クリステルは復活させないとみられないイベントがあるみたいだし、嫌だけどやるかぁ

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