恋は雨上がりのように 感想

映画版を見てよかったので感想をまとめておく。原作も、連載当初から追って途中間は空いたが最後まで読んだ。ネタバレあり。

最初、「年の差恋愛どうする?!」みたいな漫画だと思ってた。途中まででいったん読むのをやめてしまったのも、そこに興味を持てなくなったからだった。でも劇場公開されて評判を見るとどうも違うらしい。そこで改めて最後まで読んでみるとこれは、夢に向けてくすぶるおじさんの再生の物語だった。女子高生あきらの青春を描く物語であり、中年店長が青春を取り戻す物語であった。

おそらくこの作品のターゲットは、店長に感情移入するような人間たちだ。かつて夢を抱き、もがき、やがて大人という立場がそれを許さなくなり、諦めたツラをして日々を送っている、そういう「われわれ」。

そこに登場する「橘あきら」という女子高生。彼女の存在は、「われわれ」にとって非常にもどかしく、「なぜ?」と問いかけずにいられない。「なぜ、足のケガで陸上をすべて諦めてしまったのか」。

「若さ」には力強いエネルギーが宿る。「やりたいからやるんだ」「とにかくこれだけをやり続けるんだ」。しかし時にこのエネルギーは盲信を招く。「これしかないんだ」「少しでも失敗したらもう意味がないんだ」。
「われわれ」の目には、あきらが陸上を諦めたのはこの極端な「イチかゼロか」のように映る。リハビリして、少しずつ慣らしていけばいいじゃないか。まだ若いんだから。そう思う。
でも彼女たちは「3年間」という単位で生きている。常に自分の能力が右肩上がりでなければならないと感じている。今までがそうだったように。一度でも下降に転じてしまったら、「もうやり直しても仕方ない」「本当はかくあるべきだった自分にはたどり着けない」。そう断じてしまう。それが「若さ」の罪である。

僕自身も、大学受験の時に似たようなことがあった。さあ受験の天王山と煽り立てられ臨んだ高3の夏休み、始めのうちは根詰めてガリガリ勉強していたものの、1日のサボりが3日になり、3日が7日になり、結局ほぼ丸々勉強せずに過ごした。
その時頭の中を堂々めぐっていたのは「いまさら勉強したって意味がない」「周りは俺がサボっている間にも進んでしまったのだから、今から追いつけるわけがない」、というまさに極端な「イチかゼロか」思考だった。

あきらにとって、ひいては「若さ」にとって、一度の挫折はそれほど大きなものだ。でも「われわれ」から見るとそれが非常にもったいない。「3年間」のその先もあるとわかっているから、諦めるなと口を出したくなる。口を出していると思う。「はて、自分は人のことを言えるほどご立派だろうか」。

「もう若くないから」「仕事があるから」「家族があるから」。そういう理由でごまかしていた何かが、鎌首をもたげてくる。やりきって諦めたならいいだろう。でも自分はそうじゃなかった。やりきってみる前に、何かのせいにして見ないフリをしていた、努力したって才能がない、無駄だとわかったようなツラこいてたクセに、本当はまだ、恋をしている。僕だって「イチかゼロか」に囚われていたじゃないか。

あきらの恋愛をエンジンとした彼女の青春の再生、「あまやどり」のお話でありながら、それをリードするのは店長自身の鬱屈である。店長自身もあきらとのかかわりを通じて自らと向き合い、長い「あまやどり」を終え再び歩き出していく。僕も長いこと片思いをしていたけれど、最近自分でゲームを作り始めてようやく「あまやどり」が終わったような気がしている。恋は、雨上がりのように。

ダンジョンメーカーに乗り切れなかった

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尋常じゃないくらい流行ってますね。ダンジョンメーカー。なのでやりました。でも、一時間くらいプレイしたら飽きちゃいました。世間ではこんなに面白いと言われているのに、なんで僕にはハマらなかったのかなぁと思いました。感性が鈍っているのかと自分を疑いました。でもそれは悲しいのでもう少し考えてみました。

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Florenceの魅力を考えてみる。

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Florenceをプレイしました。「プレイした」というより「読んだ」「見た」「体験した」という方が適切かもしれません。Florenceという体験は、いったい何だったんだろうか。そんな感想でした。

『Florence』は、若い女性の初恋をテーマに、出会いのときめきや、胸が痛む落ち込みを伝える、インタラクティブ・ストーリーブックです。

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【Craft Warriors】クラフトウォリアーズ 防衛都市を考える

先日ご紹介したクラフトウォリアーズですが、頻繁なアップデートやプレイヤーレベルアップで、プレイフィールが変わってきました。課題点として、防衛の動機付けの薄さを上げましたが、その辺も改善されてきていると感じます。その辺がどう変わってきているのか、と、防衛で勝てる都市作りについて考えます。

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【PUBG】PCシューター初心者がソロドン勝を食べるまでにやったこと 戦場編

戦場編

思ったより長くなりました。準備編からの続きです。

とりあえず撃つ

せっせとアイテムを集めたはいいけど、会敵して、パニックになって、一発も撃たずにやられてしまった、みたいなこと、あるんじゃないでしょうか。

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【PUBG】PCシューター初心者がソロドン勝を食べるまでにやったこと 準備編

2017年をド派手にぶち上げたタイトルの一つ、『Player Unknown’s Battle Ground』。爆発的な人口増加によるサーバーダウンやチーターに悩まされつつ、17年3月のアーリーリリースから1年以上が経過してもなお、同時接続者数160万人(ガチャピンのTwitterフォロワーが157万人)を誇る大ヒット作です。

昨年4月ころ、Twitchで配信されているプレイ動画を見て、これは面白そうだと早速購入。ちょうど前職の有給消化期間に突入するタイミングだったので日がな一日中プレイしていましたが、これが難しいのなんの。シューターはおろか、PCゲーム、対人ゲームもほとんど触ることのなかった自分にとっては、慣れないWASDでの操作、震えるエイム、突然の銃声に跳ね上がる心拍数など、「こんなにゲームって難しかったっけか……」と、20数年分のキャリアを打ち砕かれた気持ちになりましたが、同時にすべてが新鮮な刺激でした。

そんな自分がやっとこさソロでドン勝を取れたのがプレイ始めから1か月、100時間くらいプレイしたタイミングだったと記憶しています。

おもわず声が出ました。みなさんはF12でスクリーンショットを撮りましょう。

今でもなお「いまの当たっただろ~」とか「武器ないじゃん、はい運ゲー」とか言ってる下手くそですが、ズブのヌーブ(新入り)から始めた自分の試行錯誤を、これから始める同志のためにも、記しておこうと思います。

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【戦場のヴァルキュリア4】とてもエモかった。感情移入してしまうキャラクター作りとは※1も含めたネタバレあり

戦場のヴァルキュリア4をクリアしました。久しぶりに「この世界が終わってほしくない」というエモい気持ちになれたタイトルだったので、このエモみを発散するためにもまずは感想を。そしてそのあとに、エモい気持ちにさせるキャラクター作りについて考えていきます。

この記事は「戦場のヴァルキュリア」および「戦場のヴァルキュリア4」のネタバレを含みます。

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クラフトウォリアーズCraft Warriorsやってます

GW前くらいから、クラフトウォリアーズというゲームを始めています。
AppStoreのおすすめにも掲載されていたので、見たことがある人も多いのではないでしょうか。

雑に言ってしまえばクラッシュオブクランクローンに当たる今作ですが、なかなかプレイしていると面白くなってきたので紹介もかねて、コンセプトからのゲームデザインへの落とし込み方を見てみようと思います。 “クラフトウォリアーズCraft Warriorsやってます” の続きを読む